最近「アンチエイジング」という言葉を、テレビや新聞はもちろんのこと、インターネット上でもよく目にします。私たち人間の「いつまでも若く健康でありたい」という欲求は健康であろうと病気と闘っていようと万人共通のものです。
ですから透析生活を送っていても、「L(エル)カルニチン」、「CoQ10(コエンザイム・キュウ・テン)」、「アミノ酸」などの言葉に敏感になるのは当然だと思います。
ここでは、透析患者さんが安心して栄養補助食品を使用する手助けになるように、最近の動向をご紹介したいと思います。


まず、最近話題の代表的な3種類の栄養素について、その働きとなぜ透析患者さんにも役立つのかについてご説明しましょう。


 Lカルニチンは、心臓や身体を動かす筋肉に多く存在して、生きていくために必要なエネルギーを作り、赤血球の寿命に関わる重要な役割を果すと言われています。Lカルニチンは、肉類などに多く含まれます。しかし、透析患者さんは食事制限などのためLカルニチンが充分には摂れません。また通常体内では、必須アミノ酸のリジンとメチオニンを材料に腎臓・肝臓・脳で合成されますが、腎不全になると腎臓での合成も出来なくなります。さらに、Lカルニチンは分子量が小さいために透析で容易に除去されてしまい、体内でのLカルニチン量は低下してしまいます。(図-1)




 数年前に大ブームを起こしたCoQ10ですが、心臓機能低下の改善効果があるため、透析患者さんに対しても注目されてきています。人の体には、およそ60兆もの細胞が存在しています。その細胞の働きを手助けしているのがCoQ10で、細胞内の栄養素を効率よく使用するための重要な補酵素です。CoQ10は、体の全ての細胞に存在していますが、心臓、脳、肝臓、肺等エネルギーを必要とする器官ほど多く存在し、特に心臓に多く含まれています。この様な働きのあるCoQ10ですが、透析による流失の程度はわかっていません。しかし、年齢とともに体内での生合成が確実に衰えていきます。特に年齢が高くなるにつれ、心臓内でのCoQ10量の低下は大きく、(図-1)透析患者さんにとっては、補給する必要性を考えてもよい栄養成分です。心臓は24時間休むことなく血液を全身に送る重要な器官です。CoQ10が不足し心臓の働きが低下すると、Lカルニチンが不足した場合と同様に、透析中や透析後の著しい血圧低下などを引き起こしてしまいます。また、CoQ10は強い抗酸化力があり、透析患者さんの酸化ストレスの軽減に有効であることが、学会でも報告されています。



 もうすっかりお馴染みになったアミノ酸です。アミノ酸は、たんぱく質を作るための成分です。たんぱく質は体内で筋肉や臓器などを構成する、生命が生きていく上で大切な成分です。アミノ酸は20種類あり、その内の9種類は体で合成されず食事から摂る必要があるので「必須アミノ酸」と呼ばれています。しかし、アミノ酸もまた、透析患者さんは食事制限のため充分に摂取することができません。また、アミノ酸は分子量が小さく透析性があり、1回の透析で5〜10g程度が失われてしまうことが分かっています。透析患者さんにとってアミノ酸の補給も、低栄養状態、筋肉量の低下、やせ、全身の倦怠感などが生じることを防ぎ健康を維持するために不可欠です。その他に流失しやすい栄養素として、水溶性のビタミンB1、B2、B6、葉酸や亜鉛などもあげられます。鉄は食事で摂取しても吸収率が悪く、欠乏しやすいミネラルです。鉄は赤血球の構成成分で酸素を運ぶ役割があり、不足すると疲れやすくなり、快適な日常生活が送りにくくなります。
 これらが透析によって欠乏しやすいといわれる代表的な栄養成分です。他にも、まだ詳しくはわかっていませんが、透析により欠乏してしまう栄養成分がたくさんあると考えられています。


 日ごろの食生活に留意することは大切です。反面、食事制限により充分な栄養素を補給できないことも事実です。そのために、サプリメントなどの栄養補助食品を使用することは一つの方法です。
 現在当クリニックには、全腎協さんの機関誌でも紹介されているLカルニチンなどを配合した栄養補助ドリンクを利用されている患者さんが、数名いらっしゃいます。透析患者さんのために考えられた栄養補助食品ですから、患者さんは安心して使用されています。なかには5年近く継続されている方もおられ、体調も良いようです。私たちも一般市販のものに比べ、安心してお勧めすることができます。これからもこのような、透析患者さん専用の栄養補助食品の開発が望まれます。

プロフィール

○看護師長 ○介護支援専門員 ○フットカイロプラクター

社会保険中京病院を経て熱田クリニックへ。10年間の熱傷、形成外科、10年間透析室の勤務経験をもとに、熱田クリニック足浴看護研究部を開設し、透析患者の創傷ケアを行う。フットカイロプラクターの資格を取得し、リフレクソロジー、アロマセラピー、サプリメントなどの代替医療による透析患者のQOLの向上を目指す。




 
 
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