β-Health通信 970号掲載(平成16年9月10日号)
〜透析治療を受けながら、充実した人生を送るために Part1〜
快適な生活を自分で管理する大切さ
医療技術は日進月歩で進化し、治療方法やその考え方も変化しています。
全国に24万人近くいらっしゃる透析患者さんの治療環境も、透析技術の発達によって、昔とは随分変わってきています。
「ごく普通に人生を楽しむことも可能、大切なのは自己管理」とおっしゃるのが、30年以上、透析医療に関わっていらっしゃる坂井瑠実先生。
今回は坂井先生に、その方法、考え方をお伺いしました。

坂井 瑠実 先生

兵庫県神戸市坂井瑠実クリニック院長
 坂井 瑠実 先生


とても大変だった30年前の透析医療
私が透析医療に携わり始めたのは、いまから30年以上前のことです。当時は水分や食事の制限が厳しく、透析治療を受けることは、今よりもかなり辛いことでした。透析開始後の生存率も非常に低く、本人にとっても、ご家族にとっても、緊迫した状態が続きました。厳しい食事制限に耐えかねて、飲み食いをしてしまう患者さんも多く、それを防ぐために、ご家族が水道の栓を止めたり、時には、部屋にカギをかけて閉じ込めるようなことさえ、あったようです。食事制限による栄養不足で体力が衰え、合併症を起こす方も少なくありませんでした。そうした状況に直面しながら、透析患者さんが少しでも楽に、少しでも長生きできるように、という思いを募らせてきました。それが、透析専門医としての私の変わらぬ思いでした。

透析治療の長期化は、医学進化の証
現在の透析治療は、以前と比べると激変しています。患者さんの数は毎年1万人ずつ増加しており、2003年12月の発表では、約23万8000人とされていますが、病理学研究や医療技術はかなり進化しています。患者さんを取り巻く環境も大きく変わりました。特に顕著なのが、透析期間が長期化していることです。25年以上という長期の方も約8000人いらっしゃると聞いています。食事指導などもきめ細かく行われるようになり、そうした効果もあって、透析を受けながら長生きすることが可能になったわけです。私が透析治療に携わり始めた頃のように、「透析が必要になったら長生きできない」ということは全くありません。透析はごく一般的な治療になったのです。私の患者さんの中にはフルマラソンを走る方がいらっしゃるほどで、透析を受けている人の方が、むしろ元気だと思うことさえあります。皆さんにも、そういうことを知っておいて頂きたいと思います。




 
 
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